tobisho 飛庄 SR-1 pruning shears Japan

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道具解説 剪定鋏

SR-1とSR-2、左利き鋏【飛庄・剪定鋏】を、取材歴10年超のライターが徹底解説

SR-1とSR-2、左利き鋏の基本情報

飛庄の剪定鋏はたくさんありますが、近年、最も親しまれているのがSR-1とSR-2のSRシリーズです。
また、飛庄のラインナップの中で「左利き鋏」というものがありますが
これは、SR-1の左仕様です。

SRシリーズは見た瞬間にわかります。
赤と黄のビニールテープで覆われた持ち手が最大の特徴。
切れ味が抜群と和風総本家などで紹介されたことで
プロ以外の人たちからも知られる存在になりました。

プロライターが解説「飛庄SR-1、SR-2、左利き鋏が安心して購入できる通販サイト」

価格はプロ向けなら相応、家庭用では安い部類ではないと思います。
特にホームセンターに置かれているラインナップを基準に考えると、そこそこします。
しかし、切れ味と耐久性=コスパを加味すると、決して高くはない買い物です。

ホームセンターで見かけることはほとんどなく
趣味の園芸店や意識が高い金物屋さんで見かけることがあり
インターネット上では、比較的よく目にします。

飛庄のラインナップの中でも、最もメジャーな剪定鋏のため
到着時間や決済のラクさから考えて、amazonで購入してもよいと思います。
特にprime会員の人はamazonでよいのではないでしょうか。

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鍛冶屋さんから直接お話を伺ったプロライターの目線から見る、「剪定鋏・飛庄(SR-1、SR-2)とは?」

SRシリーズは飛庄の三代目として、現在も活躍中の飛塚靖仁さんが開発した、飛庄のオリジナル剪定鋏です。

SR-1とSR-2、左利き鋏を作っている飛庄(鍛冶屋さん)について

飛庄は銘で、事業所としての屋号は「飛塚製鋏所」といいます。現在の飛塚靖仁さんで三代目。およそ90年近い歴史を持つ剪定鋏メーカーです。これまでの三代のうちに婚姻関係や兄弟関係なども含めてたどると、文化元年(1804年)創業の刃物づくりにまでさかのぼれるほど、刃物づくりに深く携わってきた家系といえます。

飛庄の剪定鋏づくりの特徴は、伝統と革新の両方を合わせもつところ。鋳物に刃を真鍮蝋付けするA型や全身鍛造のB型の製法を守り抜くとともに、新たにSR型や飛龍型などを開発。さまざまな顧客の好みに適合する剪定鋏をつくり続けています。

なぜ、SRという名前なの?

これについてはインターネット上で「S型が基準になっている」という書き込みを見かけますが
事実はまったく異なります。
飛庄さんから直接聞いたところ、「SR」とは「Secateurs Revolution」(=剪定鋏革命)の略です。
※個人的には「左利き鋏」を「SR-1 左仕様」にしてほしいのですが…

SR-1(左利き鋏を含む)とSR-2の良いところ・メリット・おすすめしたい人

  • 高い剛性
  • 滑らかな握り心地
  • 有数のバランスの良さ
  • 見直されたハマグリ刃の形状
  • つまりは優等生

おすすめしたい人=これ一丁で可能な作業を増やしたいプロ・何百本もの枝を剪定した後で疲れを減らしたいプロ・ワンランク上の剪定鋏がほしい人・初心者だけどハズレのない剪定鋏がほしい人

SR-1とSR-2のラインナップがあるSRシリーズは、飛庄の中でも最近できた剪定鋏です。
新しいということは、これまでのネガティブ要素を取り除くことができます。

A型は高い剛性と掴むような感覚の握り心地、自重を生かしての切断能力が魅力の剪定鋏ですが
それは同時に、人によってはゴツイ感覚を覚えるかもしれません。
B型は金型を用いての全身鍛造刃でつくられていますが
加工性やコストの面でデメリットがありました。

SR-1とSR-2は、高級刃物鋼(日立金属・YCS3)による全身鍛造により作られているため
B型のような握り心地と、A型のような剛性という
両方のメリットをひとつにしたところが画期的なところです。
個人的な意見としては、A型の方が剛性が高いような印象がありますが
SRは鋼でできているため、数値上の剛性は高いはずです。
つまり、剛性が高くありながらも、ソフトなフィーリングも併せ持っています。

また、後発ということでバランスにも最大限の改善が施されていることも大きな特徴でしょう。
たとえばA型200mmの重量は240gで、SR-1は250gです。
その差、10g、SR-1から見た質量比では4%ほどSR-1の方が重たいです。
しかし、実際に持って剪定作業をしてみると、あくまでも個人的な意見ですがSR-1の方が軽く取り回しも簡単な印象です。
自宅の庭いじりであれば気になる差ではありませんが
半日や1日、剪定作業を行う庭師さん、造園業の方であれば、その疲労の差は作業後に大きく感じることと思います。
かなりバランスが良い証拠です。

SRシリーズの刃といえばハマグリ刃ですが、その前に刃の薄さにも注目。
A型はロストワックスの鋳物に鋼の刃を真鍮蝋付けしていますし
B型は製造方法の点からやや厚めにできています。
しかし、SR-1とSR-2はひとつの良質な鋼からできているので、貼り合わせの必要がありません。
差し込みやすさ=扱いやすさも大きなポイントです。

ハマグリ刃は、切る時に抵抗を減らすための工夫です。
刃の角度にRがついていることで、切り進んだ木の断面が面でなく点で接するため
切り抜ける際の抵抗が大幅に減少します。
また、飛庄の剪定鋏の中でも切り刃と受け刃がある多くのラインナップと同じく鏡面仕上げになっています。
こちらも同様に抵抗を少しでも減らすための工夫です。

このように、SR-1とSR-2には良いところ・メリットばかりが出てきます。
それでは、ダメなところはないのでしょうか。

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SR-1(左利き鋏を含む)とSR-2の悪いところ・デメリット

  • 良くも悪くも優等生
  • TV放映などがあると品薄になる
  • 数百円レベルではあるものの価格変動が起こりやすい

先ほど、SRシリーズは優等生と書きました。
個人的にですが、私は曲者の方が好きになった時は好きなタイプです。
職人さんにもそういう方はけっこうおられるのではないでしょうか。
自分が愛用している者の評価が低かった時に
「なにを!」「分かってないな!」という、ちょっとアレな感じ(笑)は、SRシリーズにはないです。
概ね、「良い鋏だね」と聞きます。

もうひとつのデメリットは品薄と価格変動です。
飛庄さんも他のラインナップよりも量を作っていると話していましたが
よく動く商品は価格変動が大きいです。

業者が、価格勝負で値下げをしたり
amazonなどのマーケットプレイスでは
安い値段の商品の在庫がなくなると、次の価格帯の商品が最安値になって出てきます。
例:7200円と7500円の業者がいると、7200円が売り切れると7500円になってしまう。

また、飛庄さんはおそらく定期的にテレビや雑誌に紹介される存在です。
そうなると、それまで目を付けていなかった層がごそっと買いにきます。
実際に2014年に和風総本家で放映されてからの数年間ずっと品薄で
販売店はどうやって仕入れるか頭を悩ましたものです。
特にこのSRシリーズは飛庄の看板商品なので、そのようなことが起こりやすいです。

SR-1とSR-2のスペックをご紹介

サイズと重量

SR-1は全長200mm 重量は250g 左利き設定=あり
SR-2は全長180mm 重量は220g 左利き設定=なし

持ち手

鋼製。刃もボディも全身鍛造で作られています。

留め具

金留めのみ

使用している鋼

日立金属のYCS3という鋼を使用しています。
工具鋼に分類される鋼で、炭素量などを考慮しても植木を切る刃物に向いている鋼です。
どうしてこの鋼を使用しているか飛塚靖仁さんに聞いてみたところ
・バランスが良い
・飛庄の製法と適合している
・なんでも青紙などが良いわけではない
・SRは全身鍛造なので持ち手部分も含めた加工性やコストを考えた上での結論
ということ返事をもらいました。
切る対象が何か、ということがヒントになりそうです。
たとえば、柳刃包丁や鉋などの場合は、青紙鋼や白紙鋼をMAXの性能を引き出してつくり
砥石を番手の細かいところまで当てていくことで鋭く理想的な刃をつくります。
しかし、剪定鋏の場合は、切る対象が枝です。
硬く仕上げて脆い刃では欠けてしまいます。
また、常に細かい番手まで砥石を使ってピンピンに研がれている必要もありません。
むしろ、ミクロの世界では、食いつくぐらいでちょうどよいはず。
何ごともバランスで、飛庄さんはYCS3をチョイスしたというわけです。

特筆すべき製法や工夫

金属組織

YCS3の特性を生かすために、球状化を徹底追及。低温加熱で繰り返し打つことで
不純物を除去して鋼の密度を高めています。

熱処理と熱への対応

鉛バスを使った熱処理をしています。
800度で溶かした鉛の上で炭を燃やすことにより、浸炭効果からカーボン量を向上。
無酸素の状態で加熱から冷却まで行うため、過熱、酸化、脱炭を防ぎ、理想的な焼き入れ組織になります。
電気炉を用いた自動制御による焼き入れと焼き戻しや
湿式研磨により余計な熱を刃に伝えずに研ぐ技術など
熱へのこだわりがあってこその仕上がりです。
もちろん、高周波加熱は一切行っていません。

ハマグリ刃と裏スキ

切り刃の表がハマグリのような曲面のため、こう呼ばれています。
切断面と面ではなく点で接するため、摩擦抵抗を圧倒的に少ないことが特徴。
あわせて刃の裏は三次曲面を構成。
刃前から峰に向かって低くなる様にひねりを付けていることから、切断点がスムーズに移動。
抜群の切れ味を生み出しています。

人の手によるネジ締めと調整

握り心地と切断能力を最後に極めているのは、ネジ締め。
ガタがなくスムーズに開閉するように、一丁一丁感触を確かめながら合わせ具合を確認しています。

SR-1とSR-2、左利き鋏の価格帯

SR-1の定価は7,600円(税抜)=8,360円(税込) 左利きの定価は9,900円(税抜)=10,890円(税込)
SR-2の定価は7,300円(税抜)=8,030円(税込)

日本国内で購入する場合の、平均価格

SR-1はだいたい7千円台の前半での販売をよく見かけます。
ただ、いつ見ても数百円単位での価格変動している印象です。

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飛庄 SR-1、SR-2、左利き鋏のメンテナンス方法

基本的にかなり習熟した人以外は砥石をかけることが難しい製品です。
定期メンテナンスで、飛庄さんに研いでもらうことが最も望ましい解決法になります。

それでも研ぎたい人へ ~刃先の場合~

研ぐことが難しい理由はハマグリ刃。このRを維持したまま研ぐ能力が必要です。
刃先だけを#1000の砥石で研ぎ続けるとどんどん刃先が鈍角になり、切れ味が鈍くなります。
そのため、刃が後退した分だけハマグリ刃を#220の砥石などでつくりなおす必要がありますが
これはなかなかできることではないですし、鏡面のバフ研磨もし直さねばなりません。
なかなかハードルが高いのでご注意ください。
仮に研ぐ場合は以下の点をご注意ください。
・刃先のほんの少しだけにする
・表をナニワの剛研(剪定鋏用)#1000で研いで裏にかえりが出たら、かえりを取るだけ程度にだけ砥石を当てる。
・包丁でいう小刃とは逆向き=裏側から逆小刃を付けてください。(付けないと太い枝を切った時に噛んでしまいます。(このあたりの理屈は、別の機会にまとめます)
・裏を研ぐことは一切考えないでください。刃と刃の合わせがおかしくなります。

それでも研ぎたい人へ ~刃の欠けの場合~

これはもう、自分で何かしようとすることをあきらめたほうが良いかもしれません。
飛庄さんに修理依頼してください。

飛庄 SR-1、SR-2、左利き鋏のまとめ

いろんなものに「迷ったら…」という表現があります。
剪定鋏の場合は、迷ったら飛庄のSR-1(手が小さめの人はSR-2)をおすすめします。
バランス、耐久力、切れ味、すべてにバランスが良い剪定鋏です。

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URA EDGE

兵庫県神戸市出身。制作ディレクター・ライター。雑誌「庭」での連載をきっかけに40名以上の鍛冶屋さんおよび数社のメーカーを取材。刃物の海外販売ECサイト「TETSUFUKU」および国内販売ECサイト「たたらや」を運営。刃物業界、特に手打ちの鍛冶屋さんによる刃物文化を世界に発信したいとEDGESを立ち上げる。

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